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2022.08.25

アイスローズのティーポット

<アイスローズ>とはイギリスの銘窯ウエッジウッドのティーセットシリーズの銘柄のネーミングです。(その当時<ワイルドストロベリー>が日本で大人気でした。)
結婚した頃、初めて目にしたあまり日本では有名ではなかった稀な存在で、私はそのミルク色のボーンチャイナの生地に描かれていた愛らしい一輪の優しい水色の薔薇のカップに一目惚れしてしまったのでした。

口当たりも最高で、朝の食卓には欠かせない私の大好きな紅茶の器として長く親しんでいました。けれども、ある日不注意で飲み口を欠けさせてしまい、がっかりして新しい物を購入しようと輸入雑貨店に出向いたら、もう既に廃盤商品になってしまっていました。
何故こんな素敵なシリーズが廃盤になってしまうのか、疑問が残ったままで・・・
でも、大好きなカップだったので処分することも出来ずそのまま棚の奥に仕舞い込みました。

 

それから、随分と年月の経ったある日のことです。
私の通っていた教会の牧師がイギリス人で、ある日高齢のお客様があり日本の日常にお邪魔したいとのことで、我が家を訪ねて下さいました。そのお客様は80歳近くで、身体が少し麻痺してしまう病にも犯されておられた老紳士でしたが、ぜひ一度その友人牧師が日本に滞在中に日本を旅したかったとのことでした。
そこで、私はイギリス風にティータイムを準備したのでありました。
私がカップを色々集めていることに興味を示して下さり、カップボードを開けてお見せして牧師の通訳を交えながら楽しいひと時を過ごしたのでした。
その時に、老紳士の家にもアイスローズのティーセットがあると伺い、私は喜び勇んで欠けた私のアイスローズを持ち出して来て、彼にがっかりした表情でそれを見せたのでした。
その時にアイスローズが廃盤となった理由が、同じ水色に仕上げるのが大変でクレームが殺到したからということが判明しました。個人的には微妙に変化した色合いの方が手作り感があって面白いと思ったのですが・・・

 

さて、そんな疑問が解けて納得して過ごしていた一年後の夏に、突然牧師が小さな茶色い小箱を手にして我が家を訪ねて下さいました。
その箱の中身は紛れもないアイスローズのカップなのでした!
あの時の老紳士ジョン・パークさんが、牧師がイギリスに休暇で帰国することを待ちわびて私にこれをプレゼントするようにと託けて下さったのだそうです。
本当にそれは夢のような出来事で、とても感謝に満たされました。
ジョン・パークさんは奥様を既に亡くしており、ご自分も天国に行く準備をしているので身の回りの物を整理しておられ、是非とも私にこの一客を託したかったとのことなのでした。
確かにそのカップに描かれていた水色の薔薇は、私の欠けたカップの薔薇より随分濃い色目の薔薇で、同じセットを揃えておられる方からのクレームは頷ける色合いでした。

 

さて、そのことだけでも素晴らしいアイスローズのお話ですが、それから更に数年が過ぎて、ある日足繁く通っていたご近所のアンティークショップに立ち寄った日のことです。
滅多に目にすることのないあのアイスローズのカップとソーサとケーキ皿6客ずつ、それにミルクピッチャーや2客のサラダボウルやスープカップや小皿などを数点合わせた物が驚くほど格安で並べられており、私は即座に購入したのですが、お店のオーナーがたった今並べ終えたところだと、そのことに大変驚いておられました。こんなに安価にできたのは、アンティークと呼べるほどは古くないユーズド商品で、直接イギリスにてかなり安価に入手できたからということでした。これで、夏の暑い日々に数人のお客様もおもてなしできると、とても嬉しい私でした。


ただ、ティーポットだけが不在でしたが、白いポットで代用していました。

 

そんな風にアイスローズで、よくお客様をおもてなしする数年の夏を過ごしておりました。
が、つい最近ヤフーオークションのサイトにて、アイスローズのティーポットが出現したのです!即決買をしたのは言うまでもなく!サイトの主は普段からお世話になっていた信頼の於けるイギリス在住の日本の方のサイトでしたので安心です。【st356jp さん】

 

とても長くなりましたが、こんな風に私のアイスローズ愛は完結したのであります。
因みにこのアイスローズの作者は、今や女性に大人気のスージー・クーパーの初期の作品であることを後で知り驚きました!実は正直彼女の人気商品にはあまり興味がないので、とても不思議に感じました。
それに、もしかしたら、このティーポットはジョン・パークさんが使っていらした物だったかもしれないなどと思ったりして・・・私の想像の夢の翼は広がります・・・

 

2022.8.25     小出 麻由美

「アイスローズのティーポット」への2件のフィードバック

  1. 三宅千鶴 より:

    アイスローズ、これはウェッジウッドの器なのですね。優しく柔らかなブルーが心なごみます。ワイルドストロベリーよりもこちらの方が私も好みです。アイスローズに纏わるお話が素敵でした。

  2. 小出 麻由美 より:

    千鶴先生♥素敵なコメントを有難うございました。では次回は是非ともアイスローズでお茶を~

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