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2006.06.26

立葵の想い出

6月は、背丈ほどもある大きな淡い色の紫陽花一株と、いろんな色の立葵の花に囲まれて過ごしたい・・・


 


私はあまり大きい花や色の濃い花は好きではないのですが、立葵は何故か少女の頃から大好きな花の一つでした。


重なった薄い花びらのギザギザは、妖精がはさみで丁寧に切り刻んだみたい。


それに、意外と雨に似合うのです。


 


高校生の頃、美術部だった私は、放課後は好きな絵を描いて過ごしていました。


学校のそばに古い藁葺き屋根の家があり、毎年この時季には、そこのお宅は立葵にぐるりと囲まれるのです。


どうしても立葵の花が描きたくて、ある日思い切ってそのお宅を訪ねてみると、親切な老夫婦が住んでおられて、快く私の願いを聞き入れて下さいました。


雨の日も納屋を提供して下さったので、描きに行っていた記憶があります。


イーゼルやいす、絵の具箱などの沢山の荷物も預かって下さり、いつでも自由に描かせていただきました。


 


でも、花を描いている期間に、ある日突然その家からいらっしゃらなくなり、御礼の言葉も告げられないまま、絵を仕上げて引き上げることになってしまいました。


その後も、修学旅行のお土産を持って訪ねたのですが、渡せないままでした。


きっと、子供さんの所に同居なさってお幸せに過ごしていらっしゃることと、ひとり納得したものです。


 


もう、そこへは行くこともありませんが、あの立葵の花たちはどうなったのでしょうか。


少し遠い懐かしい想い出です。


 


2006.6.22 小出麻由美


 


 

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