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2008.03.14
ガレの器
私は幼い頃から、とても器の好きな少女でした。
ままごと遊びが大好きだった理由に、自然の花々と関われる楽しみの他に、器と触れ合えることもその理由のひとつだったように思います。
当時はまだ、洒落た子供向けのおままごとセットの玩具なぞありませんでしたから、母に使わなくなった器を貰ったり、草木の大きな葉を器に見立てたりして楽しんだものです。
その頃、山道のはずれに捨てられていた、花弁が四枚の花の形をした淡いブルーガラスのとても美しいお皿を見つけて、天にも昇るほど嬉しかったのを想い出します。
欠けもひび割れもなく完璧な状態で捨てられていたその一枚のガラスのお皿のお陰で、私のままごと遊びはどれだけ喜びと優雅さを増したことか・・・
その頃からの器好きは今も依然として変わらず、というかますます昂じてしまい、いつかガレのガラスが欲しい・・・とまで思うようになっていました。
ガレは19世紀末のフランス・ナンシー生まれのガラス作家です。
自ら植物や昆虫の細密画を描く、画家のような作家でした。
それで、彼の創る被せガラスは植物や昆虫をモチーフにしたものが殆どです。
色合いもどれもみな深く渋いものばかりで、光りに透かして見るとモチーフのレリーフが浮かびあがり、否応なしにその神秘的なガレの世界へと誘われてしまいます。
短大の頃親しかった友人が、うんと年上のデザイナーの彼と結婚したので、その新居へお邪魔した時のことです。
ご主人となられたその彼が、結婚前ヨーロッパ旅行から持ち帰ったというガレの花瓶を持っていました。
それは、釣鐘草をモチーフにした深いモーヴ色のほっそりとした小さな花瓶で、一目で私はそのガレの虜になったものです。
が、その友人は、ガラスの花瓶如きに何故そんなに高価な金額を支払うのか、全く理解できないと呆れていました。
私の方はそんなセンスのいい夫を持った彼女が、とてもうらやましく思えたものですが・・・
いつか、きっと私もガレを・・・
そう思いましたけれど、当時はまだまだ現実味のない遠い世界のことでした。
美術館やデパートの催し物でも、よくガレは取り扱われるので、それを見に行って楽しむだけでも、その頃の私には充分満足感を覚えたものです。
そんな中でも、これが欲しい!と思えるようなガレには滅多とお目にかかれることもありませんでした。
が、ついに「このガレが欲しい!」と思えるようなお気に入りの一品に出会ってしまったのです!
それは、時折足を運んでいた小さなアンティークショップにて。
<美術館でなくてよかったです。>
と言っても直ぐに手に入れられる値段ではありません。
ただ見つめるだけで数年が過ぎてしまいました。
時満ちて、主人から特別なプレゼントをして貰える幸運に恵まれ、それならばあのガレを!と思ったのですが果たしてまだあるのかどうか・・・
恐る恐るアンティークショップに電話を入れたら、何とまだ残っていたのです!
オーナーもかなりのお気に入りのもので、自信作としてデパートや色々な催事に出品したようなのですが、何故かいつも残ってしまい不思議に思っていたということです。
それで、もうご自分のコレクションのひとつに加えてしまおうと思っていた矢先に、私からの電話だったそうです。
それは、コンポートの形でその器の部分にいっぱい描かれた渋い深紅のスプレー薔薇のモチーフ。
ガレは当時、普通の家庭で使われていた少し高価な器。
果たして、昔のフランスの人たちは何をこの器に盛っていたのでしょう・・・
やっぱり果物だったのかしら?
サクランボやベリーが似合いそう・・・
我が家では当然、美術品としての装飾品。
コンポートの外側に繊細な薔薇のレリーフが見事に施されてあるので、下に鏡を敷いてそのレリーフが楽しめるように飾っています。
重度の障害のある子供を持ち自由に出掛けることの許されない私に、神様がご用意して下さったプレゼント!そう思って幸せな思いでいつも眺めています。
そして、そんな素敵なプレゼントをしてくれる夫は、勿論神様からの最大の私へのプレゼント!?・・・今日は夫の誕生日です!
2008.3.2 小出 麻由美
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