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2008.03.24
ほのかにひとつ
ほのかにひとつ < 北原 白秋 >
罌粟<けし>ひらく、ほのかにひとつ、
また、ひとつ・・・・・
やはらかき麦生<むぎふ>のなかに、
軟風<なよかぜ>のゆらゆるそのに。
薄き日の暮るとしもなく、
月しろのふるふゆめじを、
縺れ入るピアノの吐息
ゆふぐれになぞも泣かるる。
さあれ、またほのに生<あ>れゆく
色あかきなやみのほめき。
やはらかき麦生の靄に、
軟風のゆらゆる胸に、
罌粟ひらく、ほのかにひとつ、
また、ひとつ・・・・・
この時季に、お花屋さんの店先で目にする罌粟の花束。
見かけると、必ず買ってしまいます。
そして、その時必ず口ずさむのがこの白秋の一篇の詩。
罌粟は本当にほのかにひとつ、また、ひとつ・・・と言う感じで咲く儚げな花。
小さな堅い蕾からくしゃっと開くその花びらは、まるで薄紙のよう。
高校生の頃に見つけた白秋の詩集が大好きで、いつも繰り返し読んでいました。
深い意味など分からずに、その言葉の美しさに魅せられて日本人であることが嬉しく思えたもの。
当時、この詩は単に罌粟の花の美しさを謳っていたのかと思っていましたが、切ない恋の悩みを吐露していたのですね・・・
罌粟ひらく、ほのかにひとつ、また、ひとつ・・・
2008.3.8 小出 麻由美
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