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2009.10.25

映画 <ラフマニノフ>

この映画に出会って、ラフマニノフ作曲の音楽は大好きでよく聴いているけれど、彼の事は殆ど何も知らなかったことに気づきました。
私が知っている彼のことと言えば、ロシア生まれで彼自身も大ピアニストだったと言うことだけ。

映画は、美しいライラックの花に彩られながら、耽美な彼のメロディーで綴られた散文詩のように仕上げられていました。

リラ1

偉大な芸術家に生まれたことが、幸せよりも不幸だったような・・・
彼の奏でるピアノを聴きたい熱狂的な聴衆の為に、アメリカ全土を旅する全く自由のない日々。その移動の列車の中もスタンウェイのグランドピアノと共に過ごすだけ。

平凡な私にしてみれば、こんな偉大な芸術家になって、多くの人々の心を捉え感動させられるなんて、どんなに至福なことかしら!?と思い憧れるばかりでしたが・・・
そんな簡単なことではないですよね。
確かに選ばれし者には選ばれし重責が伴うもの。
そういえば、夏目漱石も<菫程な小さき人に生まれたし>という句を残しておられますものね・・・

ところでラフマニノフ、彼は仲の悪い両親の喧嘩に怯える幼少期を過ごし、それが彼の性格に深く陰を落としてしまい、神経質な性質がより顕著になってしまった気がします。もっとも芸術家って誰でも少なからず偏屈なところがありますけれどね。
幸いなことは、よき妻を得られていたということ。
彼女は幼なじみで彼のことをとてもよく理解し支え、常に忍耐強く優しく付き添っていた素晴らしい女性でした。まるでシューマンの妻クララのような。

やがて彼はより偉大な音楽家の道を究めるために、祖国を捨ててアメリカに亡命する運命を選びます。

彼のロシアの大地を彷彿とさせる雄大な、少し憂鬱さの込められたこの上もなく美しいピアノの旋律。
その背景が、こんなにも哀しく多くの犠牲や苦しみの上に成り立っていたことを思うと、彼の作曲した旋律がより美しく哀しく深く響いてきます。
ラフマニノフには申し訳ないのですけれど、でも彼のそんな苦悩からあのような素晴らしい音楽が生まれるのなら、人類の遺産に繋がるのですから彼にはよしとしていただきましょうか・・・
<人の成功をうらやんではならない。何故なら貴方はその人の哀しみを知らないから。>以前も感動した言葉として記しましたが、本当にラフマニノフの映画を観て少しだけ彼の人生を垣間見、その言葉の真実を思わされたのであります。

それにしても、あんなに花の咲き乱れるライラックの大木の植わった庭を見たのは初めてで、一度私も雄大な大地に咲き群れるあの大好きな花の香りに身を埋めてみたいと思ったものです。
大好きなラフマニノフのピアノ協奏曲を聴きながら・・・

リラ2

2009.10.20   小出 麻由美

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