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2006.07.08
アイス・ローズで紅茶を
<1994年4月「いのちのことば」表紙によせてに掲載された文章>
バラの季節の午下がり、突然うれしいお客さまがありました。わが教会のマケリゴット牧師と、その母教会の長老を務めていらっしゃる七十三歳のジョン・パークさん。日本のクリスチャンホームの様子をごらんになりたいとのこと。
さっそく私は、お二人のためにおいしい紅茶を淹れました。お気に入りのティーカップで。
私は紅茶とティーカップが大好きで、結婚以来、好きな花が描かれてあるものを一客ずつ集め、今では小さなカップボードに入りきれないほどになっています。
やはりイギリスからのお客さま、すぐに陶器の話に花が咲きました。パークさんは、ウェッジウッドのアイス・ローズのティーセットを揃えていらっしゃると、うれしそうにお話しくださいました。
アイス・ローズ、白い上質のボーンチャイナに描かれた優しい水色の薔薇。実はわが家のカップボードの奥にも、その水色の薔薇はひっそり咲いているのです。私はすぐにそれを取り出して、悲しげにパークさんを見つめました。私のは少し欠けてひびの入ったアイス・ローズなのです。もう絶品になってしまい、手に入れることが不可能なカップなのでした。
その薔薇の水色は常に同じ色で発色するのが非常に難しく、クレームばかりなので製造中止になったことをパークさんに教えていただきました。それは私がとても知りたかったことでした。
少しの時間でしたが、庭の薔薇も美しく、とても素敵なティータイムでした。
それから一年以上たったある日、また突然イギリスから戻ってきたばかりのマケリゴット牧師が、わが家を訪ねてくださいました。 「これをパークさんから預かりました。私の帰国をずっと待って用意していたそうです。」
私は、海を渡ってきた小さな茶色い小箱に胸がときめきました。
紛れもないアイス・ローズ! 「彼は奥さまを先に天国へ送り、子供たちも遠く、年老いて一人暮らしです。だから、喜んでくれる人がいたら、このようなプレゼントをすることは、彼自身の喜びだそうです。」
マケリゴット牧師は、静かな口調でお話しくださいました。
遠いイギリスにいらっしゃるパークさん。あなたのお幸せを心よりお祈りしながら、私はアイス・ローズで熱いミルクティーをいただいています。