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2009.03.01

浅春

日本語はとても美しいと思います。
浅春<せんしゅん>も、その美しい言葉のひとつです。
冬の終わりかけ、春の初めなのですが、そのふたつとも微妙に異なるもっと詩的に感じる表現。
白き梅の花がほころびかけ、春の足音を感じる・・・ときめきを含んだ浅春。


浅春2

その浅春という言葉を知ったのは、私が高校生の時。
ひとつ年上の物静かな文芸部の先輩の創作の題名から。
身寄りのない知的障害のあった小さな可愛らしい女の子を、遠縁の主人公が孤児院へ迎えに行くと言うただそれだけの話で、それは、特別な事柄が起きるわけでもない、日常生活の中のほんの一齣を切り抜いたようなとても美しい短編小説でした。
でも、言いようのない深い眼差しでその女の子を見詰める先輩の筆運びと、女性的で美しい日本語で綴られた文章に、私は青天の霹靂と言っても過言でないほど感動したものです。
そして当時詩作に耽っていた私に、壮大な小説は絶対に書けないけれど、こんな短編だったらもしかしたら書けるかも知れない・・・否、是非書いて見たい!と思わされるきっかけを作って下さった作品だったのです。


その先輩がいて下さったお陰で、私も高校三年生の時、県下の文芸雑誌に掲載して頂ける作品を創り出す幸運に恵まれました。
高文連と呼ばれていた年に二編しか掲載されない文芸誌に、青春の輝かしい想い出のページを飾ることが出来ましたから。
口数少なかったその先輩とは、あまり会話を交わすこともなかったのですが、彼女のお陰で素晴らしい想い出を頂きました。
それから、拙いながらも娘のことを綴った本を上梓したり、エッセイやこんな風なブログを認める機会が与えられるようになったのも、高校生のあの頃に創作の喜びを学べたからだと感謝しています。


浅春6

・・・時は繰り返し流れて・・・そう、ちょうど今が浅春と呼べる時季なのでしょう。
残念ながら、庭に咲く白い梅はないけれど、黄色いクロッカスや水仙が花を付けはじめました。
これから、一雨毎により美しい季節へ向かう入り口です。
浅春・・・


2009.2.19   小出 麻由美


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