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2006.07.05

海辺の薄紫の絨毯と、すみれ茶と、としちゃんと

<1994年2月「いのちのことば」表紙によせてに掲載された文章>


2月すみれ

  すみれ、その名を耳にするだけで幸せな気持ちになるほど好きな花です。 私の故郷、大分の海辺に、春になるとタチツボスミレで敷きつめられる雑木林があります。その季節になると、心はいつもその薄紫のすみれの絨毯の上にあって、そわそわと落ち着かない私です。 少女のころ、親友だったとしちゃんと、すみれ茶を作るために、多少の罪悪感を抱きながらも大きな籠に一杯になるまでその花を摘んで、アンとダイアナ気分に浸っていたのを懐かしく思い出します。 すみれ茶、そう言っても馴染みがないかもしれませんが、さくら茶を思い起こしてくだされば、おわかりいただけるでしょう。 そのすみれ茶なるものを初めていただいたのは、私が少女のころに出会った茶道の先生からでした。白い小さな器の中に、ふんわり開いたすみれの花、そしてそれが浮かんだ紫色に染められたお茶、紛れもないあの高貴なすみれの匂い・・・・・・。ただ口に含んだだけで、それはもうすみれ色の気分でした。 それからすぐに作り方をうかがって、私の足が海辺のタチツボスミレに向かったのは言うまでもありません。 できあがったタチツボスミレのお茶にお湯を注ぐと、小さな驚きがありました。そのお茶の色は、てっきり薄紫だとばかり思っていたのですが、お湯を差した途端、それは見る見るうちに美しいエメラルドグリーンに変わっていったのでした。私はそんなところにも、神様のみわざの不思議を思わずにはいられませんでした。 すみれを思うと、あの海辺の薄紫の絨毯と、ラベンダー夫人のように素敵なお茶の先生がいれてくださった匂いすみれのお茶、そして救いにまで長い長い道のりだった私の大切な友人としちゃんのことが思い出されます。 <すみれ茶の作り方>  材料・・・すみれの花、梅酢、粗塩1 すみれの花の部分だけ摘んで、きれいにやさしく洗い、よく水気を切る。(花を傷つけないよう    に)2 梅酢に一日たっぷりと漬ける。3 とりだして、日陰に半日ほど乾かす。4 3のすみれの花を粗塩にポプリのごとく埋める。5 適宜つまんで白い器に入れ、沸かしたての熱いお湯を注ぐ。すみれ色の気分、間違いなし! ※ すみれの種類によりお茶の色が楽しめます。匂いすみれのほうが香りが楽しめて素敵です。ほかのお花もぜひお試しください。ただし、毒のないものを。

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