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2017.02.25
梅一輪のあたたかさ
浅春と呼ばれる美しい季節の呼び名が、ぴったりの時季です。
春とは名ばかりの冷たい凛とした空気の中でも、ほんのり陽射しはあたたかです。
庭の花々は、花を約束してくれる蕾がどんどん膨らんで、それらをひとつずつ見ているだけで、とても幸せを感じる私です。
この季節に一輪ずつ咲いて春のあたたかさを教えてくれる花は、日本では何といっても梅でしょう!
でも、桜ほど話題性に欠くのは、何故かしら?花期が長いゆえん?
花の香りは殊の外素晴らしくて、日本人には不可欠な美味しい梅干しになる青い実をもたわわに実らせてくれる、決して桜に勝るとも劣らない存在ですのにね。
私も幼い頃から梅の香りが大好きで、この季節になると実家の庭にあった数本の梅の花に顔を近づけては、ひとり楽しく過ごしていたものでした。
私にとっては、幼少期のよき思い出がたくさん詰まった郷愁の花のひとつです。
先日かな書道教室で、とても素敵な梅のお題の手本を先生が下さいました。
<梅一輪、一輪づつのあたたかさ>
(梅一輪、一輪ほどのあたたかさ)
直ぐに松尾芭蕉の俳句だと思いましたが、作者は 服部嵐雪。
初めて耳にする俳人でしたが、松尾芭蕉の弟子だそうですから、納得です。
この浅春の季節を表す俳句として、これほどぴったりくる句はないと思っています。
最も、俳句の世界はあまり詳しくはない私ですが・・・
それで、先生が創作して下さったこの俳句の文字の美しいことと言ったら!
本当に一輪の梅の花のような、凛としたまるで一服の美しい絵のようです。
私の趣味は殆ど西洋的なものばかりですが、日本語と文字に関しては本当に日本人に生まれたことを誇りに感じるほど美しい世界だと思っています。
そして、このような素晴らしい感性の先生に出会えたことを心から幸運に感じています。
梅の香が匂い立ってくるようなお手本を見ながら、幸せなお稽古のひと時を過ごせました。
かな書道の世界は知らないことばかりで、日本人に生まれながら幼い頃からの教育にそれらが反映されていないのがとても残念に感じます。
きっと、そう感じるのは私だけではないでしょう。
素晴らしい掛け軸を目にしても、何を書いているのかさっぱりわからず、「難しい数学を学ぶよりこんな文字が読めるような勉強がしたかったわ。」と私が呟けば、周りにいた多くの知人の女性たちが「その通りよ!」と、口々に囁いておられましたもの。
でも、遅ればせながら、私にとってはこれからが学習する時期です。
かな書道では、墨の濃淡も大事で、全てお手本通りに書きます。
言葉の意味が途中で切れることより、見た目重要視です。
だから、言葉の途中で段落も変わる驚きの目から鱗のことばかりです。
本当に文字というより絵ですね!
文字を続ける連綿(書道で各字が次々に連続して書かれている書体)の方を文字よりしっかり書くことが大切だったり、濁点は省略したり、文章の中で、現在では突然関係のない漢字だと思える文字が充てられていたりと、とにかく驚きの未知の世界の連続です。
でも、この年代で素晴らしい先生に出会え、一から学べることは本当に幸せです。
私の拙い梅一輪が落款を押し出来上がり額に入れ、和室に飾りそれなりに満足しています。
皆様、私の師匠三宅千鶴先生の絶品の梅一輪を、是非ともご覧くださいませ。
<Blog 京都・おとなのかな書道>
2017.2.25 小出 麻由美