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2006.10.21
檸檬
高村光太郎の詩集、智恵子抄がとても好きです。
初めてその詩を知ったのは、中学校の国語の教科書で。
智恵子は東京に空が無いという~と始まる有名な詩。その頃は、まだその詩の深い意味なんて何も解ってはいませんでした。当然ですけれど。
結婚して、今ではもうその頃の光太郎や智恵子より年上になってしまいました。
もう一度読み返し、深く深く感動させられます。
光太郎の智恵子への大きな深い愛と繊細すぎる智恵子のこころ・・・
果たして、私が智恵子のように精神を煩ったとして、夫はこんな風に私を愛し続けてくれるのだろうか・・・
肉体的には哀しすぎる人生だけど、精神的には誰よりも幸せを手にしていた智恵子。
レモン哀歌
そんなにもあなたはレモンを待っていた
かなしく白いあかるい死の床で
私の手からとつた一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱつとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたの咽喉に嵐はあるが
かういう命の瀬戸ぎはに
智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた
それからひと時
昔山巓でしたやうな深呼吸を一つして
あなたの機関はそれなり止まった
写真の前に挿した桜の花かげに
すずしく光るレモンを今日も置こう
私は智恵子抄の中でこの詩が一番好きです。
一個の檸檬を通して光太郎が注ぐ智恵子への優しい眼差し。
ふたりで過ごした最後のひととき。
この上もない酸っぱい想い出・・・
今では涙なしでは読めなくなってしまいました。
さだまさしの歌の中にも<檸檬>と言う題名のものがあり、彼の曲の中で一番好きでよく聴いています。
別れの間際の男女を描写したもので、その詩では女性が檸檬を噛んだ時、トパーズ色ではなく金糸雀色<かなりやいろ>の風が舞うと表現していますけれど。
きっと彼も高村光太郎のこの詩が好きなのだろうなあと思ったりしています。
ただ、なんとなくですけれど・・・
檸檬ってその形といい香りといい、名前からしてなんだかロマンティクですよね。
もし、庭に檸檬の木が一本あって実がたくさんついたら、ただそれだけで幸せな気分になれるだろうななんて思います。
多分、檸檬の花の香りもとてもいいはずですから。
2006.10.15 小出 麻由美
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