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2011.07.18
偲び草
とても素敵な薔薇の花籠が届きました。
思い掛けない大きな生花の箱を嬉しく開けてみましたら、大好きな薄紫の薔薇の素敵な白い花籠。
贈り主の名前を見ると、それは20年近く久しく会っていない従兄から。
そして、それは愛する奥様を亡くされた失意の中から届けられた偲び草・・・
過日、義従姉の突然の訃報に驚いた私でしたが、それもそのはず、私の両親も従兄の母親(義従姉にとっては姑)にも病は伏せてあったとのこと。
時同じくして、丁度芸能界のキャンディーズの田中好子さんが同じ病で亡くなり、世間はその話でもちきりでした。
彼女も周りの方々には一切悟られぬよう、ひたすら女優業に専念しておられた中での訃報でした。
従兄にとっても感慨深い芸能情報だったことでしょう。
その義従姉も二十年前に乳癌を発病し、治療に専念した後もう再発の心配もなく暫くは落ち着いた生活を送っていたそうですが、再発してからは、死を覚悟しながら従兄と海外旅行などの沢山の喜びの中に身を置き悔いなきよう過ごされたそうです。
「伸さんだけが傍にいてくれたら、それで幸せ・・・」そう言って亡くなったと私の母から聞いています。
長さには関係なく、夫に愛されたきっと幸せな生涯だったのでしょうね・・・
その従兄は父の姉の息子で、私とは十歳近く離れています。
幼いころからなかなかハンサムな憧れのお兄さんで、からかわれたりもしたけれど、よく遊んでくれ、車の免許を取ってからは、何度も車に乗せて貰ったりしたものでした。
その従兄の結婚式は私がまだ高校生の頃。
当時リボンフラワーの趣味に凝っていた私に、お嫁さんに持たせるブーケを作って欲しいと従兄から依頼があり、心弾ませ一生懸命ブーケを作った記憶があります。
でも、実際に花嫁さんに合わせてみたら、ちょっと小さすぎの役不足で、私自身がとてもがっかりしたことを覚えています。
だけどその分、その式の披露宴で琴演奏をしっかり努めましたから、きっと喜んで貰えたと自負している次第です。(笑)
曲名は<六段の調べ>と<金剛石>。
今から考えたらよくそんな大それたことが、ひとりで出来たものだと我ながら驚いています!
きっと若かったからだわね・・・(汗)
それで、それらのお礼の気持ちも込めてと言って、私にだけ高価な織物の和装バックを新婚旅行のお土産に買ってきてくれました。
確か旅行先は沖縄だったかしら?多分そのバッグは琉球織・・・
今でも大切にしていますが、残念ながらもう私には鮮やかな赤い色合いは似合わなくなったので、娘に譲り渡しました。
良きものは大切にすれば、ずっと長持ちさせられるものですね。
きっと、娘が女の子を産めば、その娘にも譲り受け継がれてゆくのでしょう。
今ではそれが唯一の義従姉からの形見になってしまいました。
残念ながら、義従姉とは殆ど接触もなかったので、そのことすら伝えられないままでした。
一度だけ少女時代に新居に泊まりに行き、とても親切にして貰ったことがよき思い出として残っているだけです。
義従姉は薔薇とクリスマスローズが、とても好きだったことを亡くなってから知りました。
きっと近くに住んでいたら、とても仲良しでいられた気がします。
偲び草の挨拶状にも、彼女が育てた満開の薔薇が写真で添えられていました。
庭で溢れるように咲き誇っていた、私も大好きなピエール・ド・ロンサール・・・
でも、何よりも感動したのは、義従姉を最後まで大切に看とり、偲び草に妻の一番愛した薔薇を選び、人々に贈った従兄の伸司兄様です!
きっと愛する妻を亡くしたこれからの日々はとても寂しいのでしょうけれど、お兄様の心の中にいつも素敵な奥様として直美お姉様は生き続けるのですね。
庭の花々と共に・・・
*妻の法事をなし終えて 季節は今は 初夏となりくる 伸司*
伸司兄様に神様の深い慰めがありますように・・・そしてご健康とお幸せを心よりお祈りしています。 貴方に親切にして頂いた従妹の麻由美より愛を込めて・・・偲び草に感謝を込めて・・・
2011.7.1 小出麻由美